I
河の領主たち、王にはあらず
河間平原には、ウェスタロスでもっとも多く征服された地という不幸な特徴がある。豊かで肥沃であり、しかも自然の国境をまったく持たぬ〈三叉矛〉の地は、〈最初の人々〉、アンダル人、〈嵐の王〉たち、そして隣接するあらゆる王国の王たちによって、代わる代わる争われ、統治されてきたが、みずからひとつの王国として長く保ち続けることは一度もなかった。この果てなき支配者の移り変わりのなかで、タリー家は数多くの河の家門のひとつにすぎなかった ― タンブルストーンと〈紅の支流〉の合流点にある強固な立地の城リバーランの領主たちであったが、決して王ではなく、王を主張したこともなかった。
スタークの建設者ブランや、ラニスターの賢者ランのような存在をタリー家は持たない。彼らは歌い手たちに飾られた伝説の始祖を持たぬ、古く由緒ある家門であり、そこには一種の誠実さがある。河間平原最後の征服者、〈鉄の王〉ホア家が重い手で〈三叉矛〉を統べていたとき、タリー家はその多くの不満げな臣従家門のひとつに数えられていた ― そしてついには、その不満こそが彼らを高めることとなるのである。
II
領主へ高められた鱒
エイゴン・ザ・ドラゴンが〈黒のハレン〉に対して来たとき、河の領主たちは、ついに鉄人の支配から自由になる機を見出した。リバーランのエドミン・タリー公は、真っ先にハレンへの服従を拒み、みずからの河の民に征服王の旗のもとへ集うよう呼びかけた者のひとりであった。それは巧妙な賭けであり、めったにない成功を収めた。ハレンとその息子たちはハレンホールのなかで焼かれ、ホア家の〈三叉矛〉支配はともに死んだ。
その早くからの忠誠に報い、エイゴンはエドミン・タリーを〈三叉矛〉の大公に高め、跳ねる鱒に河間平原全体とそのすべての領主に対する支配権を与えた。それは目もくらむような高まりであり、より古き河の家々がおとなしく受け入れたわけではなかった。ブラックウッド家とブラッケン家、フレイ家、その他一ダースもの誇り高き血統が、みずからよりましだとも思えぬ家門に膝を折る羽目となったのである ― この遺恨は、リバーランへの河間平原の忠誠を、以来ずっと苦くしてきた。タリー家は、正しい瞬間に勝ち組を選ぶことによって偉大なる身分を得たのであり、その旗持ちたちは、その功績の乏しさをけっして忘れさせはしないのである。
III
家族、義務、誉れ
タリー家はその言葉によって統治する ― そしてその言葉は何より家族を第一とする ― 良く成された婚姻の力を、良く戦われた戦の力よりもつねに深く理解してきた家門にふさわしい信条である。それがもっとも明らかとなったのは、みずからの娘たちを、ターガリエン家を打ち倒すことになる網へと織り込んだホースター・タリー公においてであった。彼はキャトリンをスタークの世継ぎに、ライサを渓谷のジョン・アリンに約束し、リバーランをウィンターフェルと〈巣城〉に結びつけ、剣がひとつも抜かれる前に、三つの大貴族家をひとつの血の同盟へと変えたのである。
反乱が来たとき、河間平原はその戦場となった ― これまでのウェスタロスのあらゆる戦の戦場であったのと同様に。〈鐘の戦い〉はタリー家の町、〈石の杯亭〉にて戦われ、この戦全体の決定的な衝突は〈三叉矛〉その人にて、リバーランのまさに戸口にて起きた。ホースター・タリーはみずからの力と娘婿たちの大義を惜しみなく反乱軍のために費やし、それが勝ち取られると、鱒はふたたび勝ち組を選んでいた ― そして今度もまた、征服によってではなく婚姻によって ― まさにタリー家らしいやり方で。
現在進行中の物語
この最後の章は、小説そのものの戦争の運命を運ぶ。知ることを恐れぬ者のみ、読み進めるがよい。
§
腸を抜かれた鱒
家族によって生きた家門は、家族の贋物によって滅ぼされた。〈五王の戦い〉が王国を燃え上がらせたとき、河間平原はもっとも激しく燃え、ラニスターとスタークの軍勢のあいだで挽き潰され、平民はおのが畑の灰のなかで飢えた。ホースター・タリーの孫、〈若き狼〉ロブ・スタークは河間平原の大義をおのが大義とし ― そして破られた婚約の約束の代償を、この王国の記憶にあるもっとも汚らわしい裏切りをもって払った。
それは、タリー家の悲しみがしばしばそうであるように、ひとつの婚礼にて起きた。ロブの叔父エドミュアは、破られた誓いを繕うべくフレイ家の娘を娶らされ、その祝宴の最中、古き客人の権利のもとにあってなお、フレイ家とボルトン家が客人たちに襲いかかり、屠殺した ―〈赤い婚礼〉であり、ロブとその母キャトリン、リバーランの娘は、パンと塩の残骸のなかで殺された。リバーラン自体も包囲され、失われた ― もっとも、白髪の〈ブラックフィッシュ〉が最後まで持ちこたえはしたが。家族、義務、誉れ、とタリー家は言う。〈双子城〉にて、その三つすべてがともに屠られ、跳ねる鱒は、緑の民の誉れの代価を余すところなく学んだのである。
これらの分かれ道は、書物では未だ辿られぬ死や結末、道を名指す。両の道を知る者のみ ― あるいは知ることを恐れぬ者のみ ― 覆いを取れ。
タリー家は何で知られているか?
タリー家はリバーランより河間平原を統べる ― 〈黒のハレン〉に反旗を翻した功績により、征服王エイゴンより大公に高められたのである。伝説の英雄がその血統を飾ることはない。彼らの誉れは、その言葉「家族、義務、誉れ」のより平明な素材である。ホースター・タリー公は、ターガリエン家に抗する大貴族家を結びつけた婚姻を織り上げ、跳ねる鱒はこれまで、戦を交えるよりも同盟を結ぶほうが常に速かった。
タリー家の歴史はどれほど遡るのか?
この年代記はタリー家を河の領主たちより辿り ― 歌い手がメイスターを追い越すところ ― エイゴンの征服とそれに続く長き世紀を経て、現在進行中の物語の前夜まで追う。ある主張が記録ではなく伝説に拠るところでは、本文はそれを率直に告げ、歌を確かなことのように装うことはない。
このタリー家の歴史に書物のネタバレはあるのか?
開かれた章は定まった過去にとどまり、A Game of Thronesの出来事の前で閉じる。最終章 ― 現在の戦争におけるタリー家の役割 ― はネタバレの覆いの陰にあり、覆いを外すと選んだ場合にのみ明かされる。ゆえに深き歴史は、現在の物語がいかに展開するかを知らずとも、安全に読むことができる。
このタリー家の歴史は書物とドラマ、どちらに基づくのか?
書物の正典である。まずジョージ・R・R・マーティンの小説に、次いで歴史書 ― Fire & BloodとThe World of Ice & Fire ― に従い、伝説を終始伝説として印づける。テレビ版が書物と分かれるところでは、この年代記はそれに従わない。