ロバートの反乱
三百年に及ぶ竜王たちの治世を終わらせた戦争。馬上槍試合、連れ去られた貴婦人、焼かれた父、そして河の浅瀬での戦鎚の一撃 ― 起きた順に記す。
ロバートの反乱 ― 敗れた側に問えば〈簒奪者の戦争〉 ― は、現在の時代すべてがそれを軸に回る蝶番である。年代記の読者のうち、なぜ王国が今のようであるのかを問う者は、その答えをここに見出すだろう ― 竜の三世紀にわたる王朝が、血と炎、そして最後の一振りの鎚によって崩れ落ちた、わずか数年のうちに。
前奏 ― ダスケンデイルの反抗
エイリス二世王は輝かしく気前のよい治世を始め、タイウィン・ラニスターを〈王の手〉に据えたその十年は、人々が黄金時代と見誤るほどの繁栄であった。ひびが最初に露わになったのはダスケンデイルであった。〈王の手〉の諫言に反し、王は税の一件を片づけようとこの小さな町へ馬を進め、その領主デニス・ダークリンに捕らわれ、みずからの城壁のうちに一年近くも囚われの身となった。
タイウィン・ラニスターは、たとえ王がなかにいようとも町を攻め落とすべく兵を集めた ― この冷酷さを、エイリスは決して許さず、決して忘れなかった。結局のところ、夜のうちにただひとり城壁を越え、王を生きたまま連れ帰ったのは〈豪胆の〉バリスタン・セルミーであった。だが出てきた男は、入っていった男とは別人であった。ダークリン家は根絶やしにされ、あらゆる影に刃を見るようになったエイリスは、以後髪も爪も切ることを拒み、猜疑から狂気へと滑り落ちる長き道を歩み始めた ― やがてはその家門から玉座を奪うことになる道である。
前奏 ― ハレンホールの馬上槍試合
〈偽りの春〉の年、この時代最大の馬上槍試合が、王国じゅうのあらゆる名だたる者たちを、溶け崩れたハレンホールの塔の下に集めた。そこでレイガー・ターガリエン王子はウェスタロス随一の騎士たちを次々に打ち落とし ― そして、みずからの妃、ドーンのエリア姫の前を通り過ぎながら、勝者の冠 ― 青き冬薔薇の花輪 ― を、別の男の許嫁であったウィンターフェルのリアナ・スタークの膝に置いた。
あるメイスターは、これよりも軽い代償で王国が崩れ落ちた例を記録している ― だが、この無言のひと振る舞いには、それに及ぶものはなかった。同じ馬上槍試合にて、みずからを狙う陰謀の噂に赤の城より誘い出されたエイリスは、ジェイミー・ラニスターを〈王の楯〉に任じた ― タイウィンを苦しめるべく、その世継ぎを奪い去るひと手であった。〈笑う木の騎士〉と呼ばれる謎の騎士が現れ、勝ち進んでは姿を消し、王はその笑い声のうちに反逆を見た。来るべき戦のあらゆる糸が、すでにこの野にあった。誰ひとりとしてまだその模様を読み取れなかったが、機はすでに張られていたのである。
火花 ― 王子、貴婦人、そして火葬の薪
レイガーとリアナのあいだに何があったのか、年代記は正直に語ることができない ― 拉致だと王国は叫んだ。それとは別の何かだったと、以来囁く者もある。確かなのはただ、リアナ・スタークが王子とともに消え、その兄ブランドンが激怒してキングズ・ランディングへ馬を駆り、レイガーに出てきて死ねと叫んだことである。エイリスはその王子ではなく、炎をもって応えた。
王はブランドンを捕らえ、その父リカード・スターク公を、息子の弁明のために召喚した。リカードは決闘裁判を求めた ― それは彼の権利であった。エイリスは炎をおのが代闘士に任じ、〈冬の守護者〉その人を、その鎧のなかで生きたまま焼き殺した ― 息子ブランドンは、父を救う剣に届こうともがき、みずからを絞め殺しながら。続いて王はさらに二つの首を求めた ― エダード・スタークと、渓谷のジョン・アリン公の被後見人であったロバート・バラシオンである。〈巣城〉が返した答えは服従ではなく、軍旗であった。囁いていた王国が、いまや軍を進め始めた。
〈鐘の戦い〉
反乱最初の真の危機は、負傷し追われる身のロバート・バラシオンが、〈石の杯亭〉の町に身を潜めていたところに訪れた ― 新たな〈王の手〉ジョン・コニントンが、彼を探し出すべく町を家一軒一軒しらみつぶしにしていたのである。コニントンは戦を掌中に収めていた ― ロバートを捕らえていれば、真に始まる前に戦を終わらせていたかもしれない。
だが町の民は無法者を匿い、警報が鳴らされたときには、それは聖堂じゅうのあらゆる鐘によって鳴らされ、反乱軍の接近を告げた。ロバートは生き延び、名誉をもって戦い炎ひとつあげなかったコニントンは打ち破られ、追放された ― エイリスは反逆を許さぬのと同じほど、失敗をも許さなかったのである。人々はこれを〈鐘の戦い〉と呼び、コニントンはその破滅した生涯の残りを通じ、あの町を焼き払わなかったがゆえに戦を失ったのだと語り続けることになる。町が記憶するのは鐘であって、それによって敗れた王ではない。
〈三叉矛〉 ― 川に散る紅玉
戦の大半を通じ、レイガーはリアナとともに南にあって不在であり、より小さき者たちが父の戦を戦い、そして失っていた。ついに王子は王家の大軍勢 ― 四万の兵 ― を率いて北へ戻り、〈三叉矛〉の渡し場にて反乱軍と相まみえた。その一日のうちに王朝の命運が決することとなる。
そこでロバート・バラシオンとレイガー・ターガリエンは激戦のさなかに相見え、ロバートの戦鎚が三百年に及ぶ竜王の統治を終わらせた。王子は水のなかに死し、その胸当ての紅玉は砕けて流れに散った ― 今なお人々はその石を求め、〈紅玉の渡し場〉と呼ばれるその場所に潜る。伝えるところでは、レイガーはひとりの女の名を口にしながら死んだ ― そしてその名をめぐり、王国は以来ずっと論じ続けている。この王子とともに、ターガリエン家の最後の望みも斃れた。残されたのは戦ではなく、清算であった。
キングズ・ランディングの略奪
タイウィン・ラニスターは戦の全期をキャスタリー・ロックの城壁の内に籠もり、風がいずれに吹くかを見極めながら過ごしていた。それがロバートへと吹くと知るや、彼はキングズ・ランディングの門へと軍勢を進め、王冠への忠誠を装った ― そして人を信じやすく、なかば狂った王は、彼のために門を開かせた。獅子たちは都市を略奪した。
その恐怖のさなか、サー・グレガー・クレゲインは赤の城にてドーンのエリア姫とその幼い二子を殺した ― ドーンがいまなお許していない罪である。そして玉座の間にて、王の誓いし盾サー・ジェイミー・ラニスターは、狂王がその最後の命令を下す前に、エイリスの喉を掻き切った。エイリスはキングズ・ランディングの下全体にワイルドファイアを隠しており、屈するくらいならみずからの民五十万を焼き尽くすつもりだったのである。ジェイミーは都市を救い、その代わりに〈王殺し〉の名と、誤った行いのみで裁かれ続ける生涯を得た。タイウィンは、血が目立たぬようにと、殺された子らの亡骸を深紅の外套に包んでロバートに差し出した。血は、目立った。
〈歓喜の塔〉
ひとつの事案だけが、はるか南、ドーンの赤き山脈のうちに未決のまま残されていた。エダード・スタークは戦の終わりに失われた妹を探し求め、そこにひとつの寂しい塔を見出した ― 〈王の楯〉随一の三人の騎士、サー・ジェロルド・ハイタワー、サー・オズウェル・ウェント、そして〈暁の剣〉その人サー・アーサー・デインに守られていた。
なぜこの白き騎士たちが、斃れた王の傍らでもドラゴンストーンの王妃の傍らでもなく、名もなき塔を守っていたのか ― 年代記はそれを語れず、もっとも推測する者たちの熱意には事欠かない。ネッドは六人の仲間とともに来て、事が終わったとき、立っていたのは彼と沼沢地のホーランド・リードだけであった。塔のなかでは、リアナが血まみれの寝台にて死にゆこうとしていた。彼女は死ぬ前に、兄にひとつの約束をさせた ― 何を誓わせたのかを、彼は生涯沈黙のうちに抱え続けている。ネッドは塚のために塔を取り壊し、妹の骨と、そして人々が気づいたところでは、彼が決して説明することのなかった庶子の息子とともに、故郷へと帰った。
牡鹿戴冠し、竜は散る
ロバート・バラシオンは、戦鎚の権利、そして祖母より受け継いだひと筋のターガリエンの血をもって鉄の玉座を取った ― そして炎に倦み果てた王国は、おおむねそれを正当と認めることに同意した。彼はサーセイ・ラニスターを娶り、この西部の大貴族家をおのが大義に繋ぎ留め、彼を育てたジョン・アリンを〈王の手〉として留めた。ドラゴンストーンでは、その年最悪の嵐のなか、王妃レイラが娘ダエネリスを産み落として死んだ ― まさにロバートの艦隊が迫るさなかであった。
忠義の者たちは、島が陥落する前に、その生まれたばかりの少女と兄ヴィセーリスを狭い海の彼方へと秘かに逃した ― 斃れた家門の最後の竜たちであり、以後はエッソスをさすらい、後援者から後援者へと渡り歩き、母の王冠の宝石をひとつまた一つと売り払っていくことになる。ロバートは赤の城の地下室に古き竜たちの頭骨を留め置き、竜胤への憎しみを公然と誇示しながら、これを平和と呼んだ。それはある種の平和ではあり、十五年近くもち続けた。だが反乱の借財とは辛抱強い債権者であり、そのすべてが、いずれ取り立てられることとなった。
その平和と、その代償
ロバート・バラシオンは、さして望んだこともなかった玉座を勝ち取り、その後の十五年をかけて、なおもそれを望まぬことを見出し続けた。彼はドラゴンの頭骨を地下室に保管し、最後の二人のターガリエン家の者への憎しみを公然と示し続けた。その一方、狭い海の彼方では、乞食の王子と嵐に生まれた娘が、母の宝石を売りながら後援者から後援者へと渡り歩いていた。王国はそれを平和と呼び、しばらくの間はそうであった。だが反乱とは未来への借財であり、この反乱の負債 ― 殺されたドーンの姫、追放された子らたち、そしていまなお都の下に眠る狂王の野火の貯え ― は、それぞれの季節に、いずれも支払いを迫られることになる。
ロバートの反乱の発端は何であったか?
その火種は、リアナ・スタークがレイガー・ターガリエン王子とともに姿を消したことであった。リアナの兄ブランドンが正義を求めてキングズ・ランディングへ馬を進めると、エイリス二世王は彼と父リカードを殺し、続いてエダード・スタークとロバート・バラシオンの首を要求した。二人の後見人ジョン・アリンはこれを拒み、代わりに旗を掲げ、王国は戦争へと突入した。
レイガーはリアナ・スタークを誘拐したのか?
年代記は正直に答えることができない。当時の王国はそれを誘拐と呼び、その理解のもとで戦争に突入した。後の記述は、二人が自らの意志で去った可能性を示唆しており、〈喜びの塔〉での出来事 ― そこでリアナは血の褥に横たわり死に、キングスガードに守られていた ― は幾世紀もの静かな憶測を養ってきた。確かなのはそれが引き起こした戦争であり ― 二人の真実を、ネッド・スタークは沈黙のうちに携えていった。
ロバートの反乱はいかにして終わったのか?
それはトライデントの戦いにて決した ― ロバートが戦鎚をもってレイガー王子を討ち取ったのである。まもなく、タイウィン・ラニスターがキングズ・ランディングを略奪し、ジェイミー・ラニスターが狂王エイリスを殺し、最後の王党派の抵抗は〈喜びの塔〉にて終わった。ロバートは鉄の玉座を取り、戴冠し、ターガリエン王朝の三百年に及ぶ統治を終わらせた。
なぜそれは〈簒奪者の戦争〉とも呼ばれるのか?
それは、ターガリエン家の忠臣たちとその世継ぎたち ― 主に追放されたヴィセーリスとダエネリス ― が用いる呼び名であり、彼らはロバートを正当な主張を持たぬ簒奪者とみなしている。ロバートは征服の権利、そしてターガリエンの祖母よりの血統によって、その王冠を正当化した。人がどちらの名を用いるかは、その者が戦争のどちら側を選んだであろうかを、往々にして示している。