I
緑手のガースとガーデナー王たち
リーチはウェスタロスでもっとも富み、もっとも肥沃な土地であり、その民はその始まりを、伝説の〈最初の人々〉の〈上王〉緑手のガースに遡らせている ― 南部の貴族家の半ばがこれより血を引くと主張する人物である。ガースは、物語の伝えるところでは、みずからが歩くところどこでも作物を育て、蔦と花の王冠を戴き、数えきれぬ王と英雄たちの血統をもうけたという。彼は古き物語のなかでは人というより神に近く、メイスターたちも彼を、その重みを量りかねる伝説上の人物のひとりに数えている ― だが、もしその名の男が本当に生きていたのなら、彼が播いたと伝わる緑なる王国こそが、〈最初の人々〉のもっとも強大な王国となったのである。
ガースの血統より、歌い手たちの語るところでは、ガーデナー家が興った ― 幾千年にもわたりハイガーデンよりリーチを統べた王たちであり、その旗には緑の手が掲げられていた。そしてこの王たちに仕えてタイレル家が身を起こした ― 王そのものではなく、その高位の家宰であり、ガーデナー家の名のもとにハイガーデンの家宰と所領を統べた者たちである。それは大いなる信頼と、さらに大いなる好機に恵まれた職であり、忍耐強く狡猾なタイレル家は、その両方を最大限に活かした。
II
昇りゆく家宰たち
ガーデナー王朝はひと午後のうちに終わった。マーン九世王はリーチの全騎士団を率いてローレン王とともに〈火の野〉へ赴き、そこで、エイゴンの三頭の竜の前に、その息子と孫のすべてとともに死んだ ― 緑の手はひとつの恐るべき戦にて根絶やしとなったのである。ハイガーデンは無防備なままに立ち、その王家の血統は風に舞う灰となり、これを誰が保つべきかという問いは、征服者の裁定に委ねられることとなった。
エイゴンの答えは、高位の家宰ハーラン・タイレルであった。彼は戦うことなくハイガーデンを明け渡し、そのすべてを報いとして与えられた ― 彼が仕えていたまさにその座、リーチ全土に対する支配権、そして〈南部の守護者〉の職である。ひと打ちにして、家宰たちは大公へと高められ、みずからより古く誇り高き家々の上に置かれた。フローレント家をはじめとする、より良き血を持つ者たちは、この昇進をいまだ完全には許してはおらず、薔薇が権利あるとおりの座に座っていると、今日に至るまで不平をこぼしている。だが、正しい瞬間に膝を折ったのはタイレル家であり、征服の余波のうちにあっては、時宜こそがいかなる血統よりも価値あるものなのである。
III
強く伸びよ
ハイガーデンの領主として、タイレル家はその言葉が約束するとおりに繁栄した ― リーチの比類なき豊かさと、その無数の騎士たちの剣の上で、強く伸びていったのである。彼らは巧みに娶り、豪奢に饗応し、宮廷でも戦場でも欠かせぬ存在となり、富においては西部の獅子たちに次ぐのみ、動員できる兵の数においては誰にも劣らぬ地位を築いた。彼らに欠けていたのは、その競争相手たちが決して忘れさせてくれぬ古き血であった ― そこで彼らは次善のもの、すなわち玉座への近さを追い求めた。
ロバート・バラシオンの反乱が来たとき、タイレル家はターガリエン王たちへの忠義を保ち、メイス・タイレル公はストームズ・エンドの前に長く快適な包囲を敷き、城壁を一度も攻めることなく、ロバートの弟スタニスを飢えさせようとした。〈三叉矛〉が失われ、それとともに戦も失われると、メイスは戦うことなく旗を巻き、その軍勢を無傷のまま保った ― 王国最大の軍勢でありながら、一度も試されなかったのである。それはこの家門にふさわしい象徴であった ― 巨大な力を、周到に温存し、この薔薇を玉座へと近づける婚姻か好機かをひたすら待ち続ける姿である。
現在進行中の物語
この最後の章は、小説そのものの戦争の運命を運ぶ。知ることを恐れぬ者のみ、読み進めるがよい。
§
〈茨の女王〉
その好機は、ロバートが死し、リーチがその莫大な力をレネリー・バラシオンの玉座への望みに投じたときに訪れた ― これも、つねのごとく、婚姻をもって固められた。メイス・タイレルの娘マージェリーが、この王を望む男に嫁いだのである。レネリーが殺されると、タイレル家は長く悲しみはしなかった。彼らはただ手綱を持つ相手を替え、ラニスター家に加わり、ブラックウォーターにてスタニスを打ち砕き、マージェリーを代わりに若きジョフリー王へ嫁がせた。薔薇は、ついにみずからの女王を持つはずであった。
だが、この駆け引きをもっとも深く理解していたのは、あの鋭い舌を持つ家長オレンナ、〈茨の女王〉であった。孫娘が凶暴な少年に縛りつけられるのを見るよりはと、彼女はみずからの手で、彼の婚礼の祝宴の酒に毒を仕込んだと伝えられ、その罪をラニスター家に着せた。マージェリーはやがて次の王に嫁がされたが、タイレル家の上昇はついに行き過ぎとなった ― 復活した〈信仰の戦士団〉が独自の罪状で娘を捕らえ、薔薇と獅子の大同盟は内側から腐り始めたのである。タイレル家は、いかなる家宰の家門も夢見る権利のなかった高みへと昇り ― そして、その頂に近づいたところで初めて、どれほど落ちる道が長いかを学んだのである。
これらの分かれ道は、書物では未だ辿られぬ死や結末、道を名指す。両の道を知る者のみ ― あるいは知ることを恐れぬ者のみ ― 覆いを取れ。
タイレル家は何で知られているか?
タイレル家はハイガーデンより肥沃なリーチを統べ、ウェスタロスのいかなる家門よりも多くの剣を旗のもとに召集できる。彼らはガーデナー王たちの家宰として身を起こし、伝説の緑手のガースに連なる血を主張する。最後のガーデナー王が〈火の野〉にて死ぬと、エイゴンはタイレル家をリーチの大公に高めた。裕福で、宮廷風で、黄金においてはラニスター家に次ぐこの家門の薔薇は、いまなお古き家々がその地位を怨む土壌の上で、力強く育っている。
タイレル家の歴史はどれほど遡るのか?
この年代記はタイレル家を緑手のガースより辿り ― 歌い手がメイスターを追い越すところ ― エイゴンの征服とそれに続く長き世紀を経て、現在進行中の物語の前夜まで追う。ある主張が記録ではなく伝説に拠るところでは、本文はそれを率直に告げ、歌を確かなことのように装うことはない。
このタイレル家の歴史に書物のネタバレはあるのか?
開かれた章は定まった過去にとどまり、A Game of Thronesの出来事の前で閉じる。最終章 ― 現在の戦争におけるタイレル家の役割 ― はネタバレの覆いの陰にあり、覆いを外すと選んだ場合にのみ明かされる。ゆえに深き歴史は、現在の物語がいかに展開するかを知らずとも、安全に読むことができる。
このタイレル家の歴史は書物とドラマ、どちらに基づくのか?
書物の正典である。まずジョージ・R・R・マーティンの小説に、次いで歴史書 ― Fire & BloodとThe World of Ice & Fire ― に従い、伝説を終始伝説として印づける。テレビ版が書物と分かれるところでは、この年代記はそれに従わない。